上水道分野
経営の健全化
1.地域水道ビジョンの策定業務(水道PI含む)
概要
地域水道ビジョンは、地域の水道事業の現状と将来見通しを定量的に分析・評価した上で、「水道ビジョン」の方針を踏まえて目指すべき将来像を描き、その実現のための方策等を含めて水道事業者が作成するものです。地域水道ビジョンは今後10年程度を目標期間とし、「事業の現状分析・評価」、「将来像の設定」、「目標の設定」、「実現方策の検討」について記載することとなっています。
平成24年4月1日現在、「地域水道ビジョン作成の手引き」に示した要件に該当する地域水道ビジョンは、上水道事業735事業、用水供給事業68事業策定されています。
現在、地域水道ビジョンが策定されている上水道事業数の割合は50%、用水供給事業数割合は67%となっています。また、地域水道ビジョンが策定されている上水道事業の現在の給水人口の合計は、全国の上水道事業の合計の85%となっています。
業務実施のメリットや効果
① 更新期を迎えた水道事業の課題の整理が可能となります。
② 市内水道事業の将来のあるべき姿を描くことにより、事業の方向性を示すことができます。
③ 水道事業の現状と今後の事業について、水道利用者の理解を求める良い機会です。
◆ 水道利用者に開かれた水道事業を目指すために、アンケートの実施を推奨します。
◆ 業務指標(PI)の作成により、他の水道事業者と相対的な比較を行います。
◆ 水道年表により、創設期から現在に至るまでの水道の歴史をまとめます。
◆ 事業計画と財政シミュレーションにより、将来の料金体系に関する検討もできます。
地域水道ビジョンを効果的に活用するための提案
地域水道ビジョンを効果的なものとするために、5つのメニューを提案いたします。
①アンケートの実施
水道の現状と将来に対する住民の意見を今後の水道事業運営に反映させるために、アンケートの実施を推奨します。
アンケートの内容は、水道の質、料金、事業運営などについて幅広く質問を設けますが、住民が「水道施設の更新を将来に先送りするべきか」を考える機会にもなります。
②簡易水道固定資産台帳との整合と財政シミュレーション
簡易水道事業の固定資産の整理作業と同時に行うことにより、施設の経過年数、状況、能力、投資額等が整理が円滑に整理され、企業会計化した場合の財政シミュレーションと給水原価の把握を可能にします。
地域水道ビジョンにおいては、給水原価の内訳や水道事業者の努力による費用削減項目などの情報公開を行い、料金体系に対する住民理解を深めていくことを提案します。
③アセットマネジメントへの展開
固定資産台帳を利用して、施設の更新需要と更新時期を算出し、地域水道ビジョンにおける事業計画をより現実的なものにします。また、同様の考え方によりアセットマネジメントの導入が可能となります。
独立採算を原則とする水道事業の経営健全化のための説明資料として効果的です。
④管路台帳システム(マッピングシステム)の活用
管路台帳システムを活用することにより、老朽管延長、耐震管路延長等を把握し、更新・耐震化に対する整理を容易にします。
K形継手の地盤適合性判定、地震時被害率算定、耐震化率の算定も可能となり、水道施設の課題の数値化、マッピング色分け表示による見える化を可能とし、地域水道ビジョンの説得力を高めます。
⑤耐震化計画・災害対策
地域水道ビジョンの中では、災害対策について整理しますが、マッピングシステムに市町村の重要施設である避難所、病院、公共施設と共に、これらに直結する水道の重要路線や応急給水施設を示すことにより、災害時の復旧体制をより円滑にすることができます。
地域水道ビジョンにおいては、これらの重要な施設や災害対策についてとりまとめ、予防保全・事後保全の両面から維持管理性の向上を支援いたします。
2.水道の広域化計画の策定業務(上水・簡水統合)
概要
厚生労働事務次官通知(H19.6.11)において、平成21年度までに統合計画を策定した簡易水道事業のみ補助対象となります。なお、既存の水道事業に統合可能な簡易水道事業や給水原価や施設整備費が安価な事業も補助対象としない、としています。
業務実施のメリットや効果
① 簡易水道統合整備事業は国庫補助の対象となります。
② 物理的に接続しないソフト統合における遠方監視設備の導入も国庫補助の対象となります。
③ 特定簡易水道の国庫補助は平成28年度末までとされています。
◆ 簡易水道事業統合計画書に基づく、統合整備事業の推進のバックアップをします。
◆ 簡易水道統合に関連する、会計統合支援、事業統合支援(変更認可)を行います。
◆ 簡易水道統合整備事業に関する国庫補助申請を支援します。
「新たな水道広域化」の推進に当たっては、持続的な事業運営、給水サービスの向上を図るため、水道施設に係わる管理において、従来の単独事業体内での集中化・一元化等に加え、他事業体も含めた広域的設備管理を推進していく必要があります。
広域化により期待される効果
|
事業統合 | 経営の一体化 | 管理の一体化 | 施設の共同化 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
①企業団化等複数の水道事業による事業統合(水平統合) ②用水供給事業と水道事業の統合(垂直統合) |
①同一の経営主体が複数の事業を経営 | ①中核となる水道事業への管理委託 ②管理組織への業務の共同委託 ③用水供給事業による受水団体の管理一体化 |
①浄水場等共同施設の保有 ②緊急時の連絡 ③災害時の応援協定 |
|||
技 術 基 盤 の 効 果 |
水需給 | 水需給 の不均衡解消 |
◎ | - | - | - |
複数水源による 供給安定性の向上 |
◎ | - | - | - | ||
施設 | 施設整備水準 の平準化 |
◎ | ◎ | - | ◎ | |
施設の統廃合・ 効果的な更新 |
◎ | - | - | ◎ | ||
管理 | 人財確保・技術力 の確保 |
◎ | ◎ | ○ | - | |
管理体制の強化 | ◎ | ◎ | ○ | - | ||
緊急時 | 緊急時体制の強化 | ◎ | ◎ | ○ | ○ | |
水源の多元性による バックアップ態勢強化 |
◎ | - | - | ○ | ||
経 営 基 盤 の 効 果 |
財源 | 更新財源の確保 | - | - | - | - |
事業計画 | 柔軟な事業計画 | ◎ | ○ | - | - | |
運営 | 効率的運営 | ◎ | ○ | ○ | ○ | |
サービス | 料金格差の是正 | ◎ | - | - | - | |
情報提供、 利用の利便性拡大 |
◎ | ◎ | ○ | - | ||
支払窓口の 利便性拡大 |
◎ | ◎ | - | - | ||
未給水地域解消 | ◎ | - | - | - |
- ◎:効果が期待できる。
- ○:内容に応じて効果が期待できる。
3.漏水防止対策(有効率向上プログラム)の検討業務
概要
漏水の防止対策は、有効率向上の具体的な目標値を設定し、中長期に有効かつ実現可能な総合的な計画を策定することにあります。
有効率は、平成2年厚生省通知(平成2年12月11日衛水第282号)の「水道の漏水防止対策の強化について」により、有効率が90%未満の事業にあっては、早急に90%に達するよう漏水防止対策を進め、現状の有効率が90%以上の事業についてはさらに高い有効率の目標値(95%程度)を設定し、今後ともに計画的な漏水防止に努めることとされています。
業務実施のメリットや効果
① 有収水量の増加が見込めない時代において、有収率の向上は経営効率の向上につながります。
② 漏水防止により、動力費や薬品費が削減され、省エネルギー化が図れます。
③ 有収率の向上に伴い、割高な修繕費の削減が見込めます。
◆ 配水量の分析:日本水道協会「漏水防止対策指針」の配水量分析表に基づき、配水量を分析します。
◆ 漏水量の把握と分析:配水流量、メーター検針水量等の水量実績により、配水池別、地区別、区画別に漏水箇所を絞り込みます。
◆ 漏水探知機による調査:漏水によって発生する振動音を電気的に探知し、音を増幅して聞くことにより漏水箇所を特定します。
◆ 配水管布設替え計画の作成:調査結果をもとに、有収率を効果的に向上させるための配水管布設替え計画を作成します。
漏水防止対策
部門 | 項目 | 施策 |
---|---|---|
基 礎 的 対 策 |
防水防止の準備 | 財源、組織の確保 図書類(配管図、区画図等)の整備 管路情報管理システムの導入 区域の設定、計量設備の整備 |
実態調査 | 配水量、漏水量の分析、水圧測定 漏水原因の追究、漏水分析 |
|
管材料の研究と改良、開発 | 配水管ならびに給水管の管材料、継手材料、付属器具類 | |
技術開発 | 漏水量測定法、埋設管探知法 | |
対的 処対 療策 法 |
機動的作業 | 地上漏水の即刻修理 |
計画的作業 | 地上漏水の早期発見、修理 | |
予 防 的 対 策 |
水道事業の計画 | 漏水防止を配慮した計画 |
管網解析・管網評価 | 水圧分布の状況、経年劣化状況、継手種別等 | |
水道施設の設計施工 | 耐震性、耐久性、耐食性、水密性 | |
経年管の取り替え (漏水多発管の取り替え) |
配水管および給水管の取り替え(管種変更も含む) | |
給水装置の構造の改善 | 道路横断管の集約化 | |
管路の防護 | 量水器をできる限り官民境界に近い位置に設置 | |
防食、漏水防止金具の取付、曲管部の補強 | ||
残存管の処理 | 分岐箇所における完全な処理 | |
給水装置の管理の徹底 | ||
管路のパトロール | 他企業工事による損傷を防ぐための指導、監督 | |
水圧の調整 | 配水系統の分割、減圧弁の設置 |
4.短期的な財政計画(料金改定)の策定業務
概要
水道事業は独立採算性が求められ、財源は水道料金が基本となります。適正な料金体系への改定を定期的に実施することにより、健全な水道事業の運営につながります。料金算定期間は概ね将来の3年から5年を基準に設定することが妥当でああると考えられています。
業務実施のメリットや効果
① 経営の健全性を確保できます。
② 事業の財源を確保できます。
③ 水道審議会、議会などの説明資料となります。
◆ 事業計画から財政計画までの一連の流れをシミュレーション可能です。
◆ 簡易水道事業の統合を見据えた料金体系の検討が望まれます。
◆ 今後の起債償還や減価償却費を見据えた無理のない事業計画の作成を支援します。
★料金が適正であるためには、下記の事項が必要とされます。
① 事業の能率的経営を前提とする原価が基礎となっていること
② 総括原価は、単に既存の水道施設を維持するためのものばかりでなく、水道施設の拡充強化のための原価をも含むものであること
③ 料金負担の公平の見地から、各使用者の料金は個別原価にもとづき算定されているものであること
★料金改定時期の判断
水道料金改定時期の判断の目安は次の通りです。
◆財政的なタイミング
1) 料金算定期間が満了したとき
2) 予算又は決算(見込み)が単年度で赤字になったとき
3) 累積欠損金が発生または発生する見込みのとき
4) 資金残高がマイナスになったとき
5) 受水費や支払利息など相当な費用増加が予想されるとき
◆政治的なタイミング
1) 市町村長または議員の選挙が終わって一定期間を経過したとき
2) 住民、議員等の要請を実現するために多額の費用が見込まれるとき
3) 近隣市町村で料金改定があったとき
◆その他
1) 簡易水道統合整備事業後
2) 施設の更新事業後
★事前広報
水道事業の経営状況を健全化するために料金を改定することであるため、水道使用者に対する料金改定に関する事前の広報は大変重要なものとなります。このため、広報等の紙面、水道使用量のお知らせ(検針票)の裏面などを使用して、水道事業の動向について積極的に広報をしておく必要があります。尚、水道ビジョン等により、水道事業の実態について水道使用者に理解を求める手段も有効です。
事前広報としては、料金改定の理由が使用者の理解が得られやすく、水道の水質、水量、水圧面でのサービス向上性(メリット)に対する対価であることを示すことが望ましいと考えられます。
★料金審議会
料金を改定する場合、審議会を設置して改定原案をつめた上で議会に提出する方法と、審議会を設けないで事務局が作成した改定案を議会に提出する2つの方法がありますが、改定の理由や内容を町民各界の代表に理解してもらった上で、改正案をまとめ上げる審議会を経由する方法の方が、議会での理解が得られやすいメリットがあります。審議会は議会議員、学識経験者、水道使用者等により構成されます。
★審議会の開催
料金審議会は2~3回開催し、料金改定の答申については以下のような内容があります。
① 水道料金の改定率。過去の改定の経緯
② 改訂水道料金の算定期間
③ 料金改定の時期
④ 料金表
⑤ 事業実施計画
⑥ 水道事業者側の企業努力
⑦ 料金改定に伴うサービスの向上
★議会審議
審議会の答申が出たら、議会での審議を受けることになります。料金の改定案は条例改正により成立するため、条例改正案を作成し、それについての説明資料の作成を行います。料金改定はデリケートな案件なので、事前に議会や所管委員会に改訂の要旨を説明し理解を得ておくことも重要です。
★改正の広報
料金改正が議会で可決された後は、すみやかに使用者に通知する必要があります。広報の手段としては広報紙等が一般的でです。料金改正については、ここでも改正理由とサービス向上を示す必要があるといえます。
★料金変更届
水道料金を変更した場合は、水道法第14条第2項により変更届の提出が義務付けられています。届出書には、料金の算出根拠および経営収支の概要を記載した書面をそえることとなっており、その様式は「水道法の施行について」(昭和32年12月27日 発衛第520号 事務次官通達)の様式第1に示されています。
【水道料金の算定(配賦原価の集計)】
(出典:中小規模水道運営の実務 /全国簡易水道協議会)
(出典:簡易水道経営入門 /全国簡易水道協議会)
5.PFIの導入検討及び支援業務
概要
水道事業においては、様々な運営形態(PFI法、地方独立行政法人法の制定、第三者委託制度、指定管理者制度)を選択可能な状況にあり、財政支出の削減や民間的経営手法による業務の適性化などの利点がありますが、事業範囲の設定や導入手法の選定などを適切に判断することが重要です。
業務実施のメリットや効果
PFI導入可能性の簡易判定が可能です。
本業務では、VFM、リスク分担等の各種検討・評価を行いPFI事業全般にわたり可能性調査から導入支援までを行います。
アセットマネジメント導入支援
1.水道事業におけるアセットマネジメント
概要
水道におけるアセットマネジメント(資産管理)とは、「水道ビジョンに掲げた持続可能な水道事業を実現するために、中長期的な視点に立ち、水道施設のライフサイクル全体にわたって効率的かつ効果的に水道施設を管理運営する体系化された実践活動」を指すものであり、厚生労働省健康局水道課より、水道事業におけるアセットマネジメント(資産管理)に関する手引きが示されています。
業務実施のメリットや効果
① 基礎データの整備や技術的な知見に基づく点検・診断等により、現有施設の健全性等を適切に評価し、将来における水道施設全体の更新需要を掴むとともに、重要度・優先度を踏まえた更新投資の平準化が可能となります。
② 中長期的な視点を持って、更新需要や財政収支の見通しを立てることにより、財源の裏付けを有する計画的な更新投資を行うことができます。
③ 計画的な更新投資により、老朽化に伴う突発的な断水事故や地震発生時の被害が軽減されるとともに、水道施設全体のライフサイクルコストの減少につながります。
④ 水道施設の健全性や更新事業の必要性・重要性について、水道利用者や議会等に対する説明責任を果たすことができ、信頼性の高い水道事業運営が達成できます。
◆ 固定資産台帳、管路台帳、水道統計、決算書を基に作成が可能です。
◆ 複数ケースの検討により、中長期的な財政見通しを可能とします。
2.水道施設の機能診断・ミクロマネジメント
概要
中長期的財政収支に基づく施設更新等を計画的に実行し、長期的視点に立ち水道施設のライフサイクル全体で効率・効果的に管理運営することが必要です。
業務実施のメリットや効果
① 評価を数値化することにより、定量的に診断が可能となります。
② 水道施設の技術水準が向上します。
③ 施設稼働率や維持管理性の向上が図られ、省力化、省エネルギー化につながります。
◆ 土木施設、機械・電気・計装設備、管路等を総合的に診断・評価できます。
◆ 水道事業全体としての評価も可能です。
◆ 水道ビジョンとの整合評価を行います。
安心・快適な給水の確保
1.水安全計画の策定業務
概要
我が国の水道では、水道水の水質基準項目に比べ常時監視可能なものは少なく、検査により結果を得る場合、それなりの時間を要するため、水質検査以外の措置により水の安全性を確保する必要があります。
安全に関して、食品業界では、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)手法による安全管理が導入され、安全性の向上が図られています。この手法は、「何が危害の原因となるのか」を明確化し、危害の原因を排除するため、重要管理点を重点的かつ継続的に監視することで衛生管理を行うものです。
水安全計画とは、水道分野において、水源から給水栓に至るすべての段階において包括的な危害評価と危機管理を行い、安全な飲料水を常時供給し続けるため策定する計画です。また、2004年WHO飲料水水質ガイドライン第3版において、この手法の考え方について水道への導入が提唱されています。策定時期については、平成20年5月の厚生労働省の通知では、平成23年度頃までを目途に策定が求められています。
業務実施のメリットや効果
① 安全性の向上
② 維持管理の向上・効率化
③ 技術の継承
④ 需要者への安全性に関する説明責任(アカウンタビリティ)
⑤ 一元管理
⑥ 関係者の連携強化
OECでは、水安全計画策定ガイドラインに準じ、安全な飲料水を供給する有効な方法として水源から給水栓における包括的な危機評価と危機管理の2つの側面から、
① 水道システムの評価
② 管理措置の設定
③ 計画の運用
について「水安全計画」として策定します(ただし、地震による水道システムへの直接の危害は除きます)。
2.水道水源保全対策の検討業務
概要
安全な水道水を安定供給するためには、できるだけ良質な原水を確保することが基本です。平成6年には、水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律が制定されました。対策の現状は、平成19年3月時点で、水源保護等の条例制定が160市町村、水源保護等の要綱・要領の制定が45市町村、基金の制定が53市町村、水源涵養林への関与が130市町村、流域協議会の組織・参加が348市町村、上流排水処理施設への援助が25市町村となっています。
業務実施のメリットや効果
① 安全な水道水の確保
② 良質な水道水の確保
③ 利用者の信頼回復
本業務では、トリハロメタン等の有害物質を含む原水水質の予測評価を行い、水道原水の水質保全対策や水道施設の水質改善対策を立案します。また、水源保護等条例や要綱・要領の制定のお手伝いや基金や水源涵養林等の水源保全対策を実現可能性と費用対効果の観点から総合的に立案します。
【関係省庁による健全な水循環構築への検討】
【市町村における水道水源の保全の取組状況】
3.クリプトスポリジウム対策の検討業務
概要
耐塩素性病原生物であるクリプトスポリジウムへの対策については、水道原水の種別毎に指標菌となる(大腸菌E.Coli)及び嫌気性芽胞菌の検出状況などを評価し、汚染の恐れがある場合はレベル1から4までの4段階のリスクレベルの判断を行います。リスクレベル(汚染のおそれの程度)が3または4の場合は、ろ過設備や紫外線処理設備などの施設整備とその適正な運転管理が必要となります。平成21年3月時点では、表流水、伏流水、浅井戸又は深井戸を水源とする浄水施設19,954施設のうち、汚染の恐れがあるのは5,948施設(3,512施設では対策実施済み)となっています。
業務実施のメリットや効果
① 汚染リスクへの適切な評価・判断により、人の健康に対する安全確保に寄与します。
② 紫外線処理設備など必要な対策の導入と維持管理体制について具体化します。
③ 水源計画、事業計画などの検討や法手続きによるサポートを実施します。
OECでは、「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」に基づき、水道原水に係るクリプトスポリジウム等によるリスクレベル(汚染のおそれの程度)を分類し、各分類に対応した施設整備、原水等の検査、運転管理、施設整備中の管理等の措置について検討します。特に、対策施設(紫外線処理設備、ろ過施設)等の整備に関する計画・設計について支援致します。
厚生労働省では、平成9年度から膜処理施設の整備を、平成17年度には簡易水道におけるクリプトスポリジウム対策としてろ過施設整備に代替して開発する水源施設の整備を国庫補助対象としています。また、同省は、平成19年3月の水道施設の技術的基準を定める省令の改正を踏まえ、一般的なろ過施設より安価に整備することができる紫外線処理施設の整備を国庫補助対象に加えるとともに、対策が必要な既存水源を廃止し、別の自己水源から取水する場合等に必要な施設の整備を国庫補助対象に加えています。
【汚染レベルの判断フロー】
水道原水に係るクリプトスポリジウム等による汚染のおそれの判断
レベル | 汚染状況 | 検出状況 |
---|---|---|
レベル4 | クリプトスポリジウム等の汚染のおそれが高い | 地表水を水道の原水としており、当該原水から指標菌が検出されたことがある施設 |
レベル3 | クリプトスポリジウム等の汚染のおそれがある | 地表水以外の水を水道の原水としており、当該原水から指標菌が検出されたことがある施設 |
レベル2 | 当面、クリプトスポリジウム等の汚染の可能性が低い | 地表水等が混入していない被圧地下水以外の水を水道の原水としており、当該原水から指標菌が検出されたことがない施設 |
レベル1 | 当面、クリプトスポリジウム等の汚染の可能性が低い | 地表水等が混入していない被圧地下水のみを水道の原水としており、当該原水から指標菌が検出されたことがない施設 |
4.高度な浄水施設の導入検討業務
概要
クリプトスポリジウム、トリハロメタン、異臭味、地下水汚染など水道水源の抱える問題は多様化しています。国においては飲料水水質基準50項目、水質管理目標設定27項目、要検討44項目、と多様な項目への対応が進められています。水道水源への安心・安全への要望は大きくなっています。また浄水施設の老朽化対応も加わり、新しい浄水技術により安全性・安定性・効率性・経済性を含めた施設の整備を進める必要があります。
業務実施のメリットや効果
① 飲料水の安全性の向上
② 飲料水水質の安定処理
③ 施設の維持管理負荷の軽減
本業務では、原水水質の動向に合わせた既存浄水施設の改良・更新を検討します。またさまざまな高度な浄水技術の中から水源水質動向に最適な組み合わせを提案します。新設備の導入に際しては浄水場全体の維持管理を軽減する検討をします。また財政計画についても検討します。
災害対策の充実
1.総合的な渇水対策の策定業務
概要
近年の少雨化傾向により、渇水の発生する頻度が高くなっています。清浄な水の安定給水を前提としている現代社会においては、渇水に伴う減水や断水は市民生活及び産業活動に大きな影響を及ぼします。水道事業においては、安定した水道水源の確保や渇水時対策が重要課題となっており、地域特性を踏まえた規模の渇水に対し水道システム全体で安全性を確保する必要があります。
業務実施のメリットや効果
① 安定した水資源の確保
② 効率的な水運用
③ 渇水時対策の強化
【渇水対策検討事例】
本業務では地域特性を考慮した渇水リスクを把握し、現有施設の有効活用を踏まえたうえで、水道システム全体の安全性の向上を図ります。長期的に安定した水源の確保・分散、原水水質変動に対応可能な浄水施設の整備、更には効率的な水運用を可能とする管理設備を計画し、渇水時対策を事前に整備することで、気候変動に強い安定した水道システムの提案を行います。
【渇水対策の策定業務フロー】
2.水道の耐震化計画の策定業務
概要
我が国の水道は、普及率が97%を超え、市民生活、社会活動に不可欠なものとなっています。近年では国内で大規模地震が多発しておりますが、被災時においての基幹的な水道施設の安全性の確保や重要施設等への給水の確保、さらに被災した後に速やかに復旧できる体制の整備がライフラインとして水道事業が果たすべきが最重要課題であります。
一方、水道施設の耐震化の進捗状況を見ると、平成21年度末(平成22年3月末)現在、水道施設のうち基幹的な施設である浄水場の耐震化率は約16.8%、配水池は約34.5%、また、基幹的な管路の耐震適合性のある管の割合は約30.3%であり、備えが十分であるとはいえない状況です。
このような状況であることから、地震に強い水道を目指してこれまで以上に水道施設の耐震化の取組を行っていく必要があります。
業務実施のメリットや効果
① 地震被害の最小化
② 応急給水体制の確立
③ 復旧の迅速化
地震対策の分類・体系
地 震 対 策 |
施 設 耐 震 化 対 策 |
被 害 発 生 の 抑 制 |
水源施設等の耐震化 | 水源施設の耐震化 |
構造物等の耐震化 | ||||
機械・電気施設等の耐震化 | ||||
管路施設の耐震化 | 管路の耐震化 | |||
管路付属設備の耐震化 | ||||
特殊形態管路の耐震化 | ||||
給水装置の耐震化 | 給水装置の耐震化 | |||
建物内給水装置の耐震化 | ||||
管路施工面の耐震化 | 管路施工上の留意点 | |||
影 響 の 最 小 化 |
管路システムの耐震化 | バックアップ施設の整備 | ||
ブロックシステムの整備 | ||||
ループシステムの整備 | ||||
障害物の除去 | 作業障害物の除去 | |||
バルブの設備と操作 | バルブの整備 | |||
バルブの操作 | ||||
二次災害の防止 | 消化用水量の確保 | |||
斜面崩壊対策 | ||||
水質汚染対策 | ||||
応 急 対 策 |
復 旧 の 迅 速 化 |
情報の収集と広報 | 被害箇所の特定 | |
広報の実施 | ||||
応急復旧の迅速化 | 緊急措置 | |||
応急復旧の実施(復旧作業水の確保) | ||||
ブロックシステムの復旧 | ||||
作業力の確保と応援の受け入れ体制 | 作業力の確保 | |||
救援隊の確保 | ||||
材科規格の統一 | ||||
応 急 給 水 の 充 実 |
運搬給水 | 水の確保 | ||
資機材の備蓄 | ||||
応急給水体制 | ||||
拠点給水 | 拠点給水設置場所 | |||
配水管整備 | ||||
耐震性貯水槽 | ||||
仮設給水 | 避難所給水 | |||
仮設住宅への給水 | ||||
医療機関等への給水 |
本業務では、地震に強い水道システム構築のため、個々の施設について耐震性を高めることのみならず、水源から水道の利用者に至るまでの水道システム全体としての機能維持、代替機能の確保を含む幅広い範囲について調査・検討を行います。
また、耐震化方策を最も効率的・効果的に行うため、段階的な耐震化の目標をたてて、計画的に優先度の高い事業から実施する計画を策定します。さらに、防災対策のみならず、被災時の応急給水・復旧計画、BCPマニュアルの作成等の減災対策も含めた総合的な地震対策をご提案いたします。
【耐震性貯水槽】
3.水道の危機管理対策(自然災害・水質事故・テロ等)検討業務
概要
水道事業には、地震・渇水などの自然災害や、水質事故、テロ・停電等の非常事態においても、生命や生活のための水の確保が求められます。このため、基幹的な水道施設の安全性の確保や重要施設等への給水の確保、さらに、被災した場合でも速やかに復旧できる体制の確保等が必要となります。
これらのことに対応するため、既存水道システムの全施設及び組織全体を把握し、水道の危機管理対策を策定することは水道事業者にとって極めて重要な課題となっております。
業務実施のメリットや効果
① 被害想定による効率的なリスク低減対策
② 事業継続計画(BCPマニュアル)の策定
③ 被災時の速やかな初動体制の確立
【危機管理対策の業務フロー】
【事業継続計画(BCP)の概念】
本業務では、自然災害・各種事故・テロ等に対し、事業継続計画の整備及びリスク低減対策の両面から総合的な危機管理対策を検討し、被災時の被害規模を最小化するための提案をいたします。
環境・エネルギー対策
1.水道の環境保全計画の策定業務
概要
水道事業は、水循環系の構成要素として、清浄で安全な水を安定的に供給するという重要な役割を果たしている反面、多量のエネルギーや各種資源を消費し、浄水汚泥や廃棄物を発生させ、環境に少なからず影響を及ぼして成立しています。
近年、地球温暖化対策、物質循環の確保と循環型社会の形成、環境保全上健全な水循環の確保など、環境問題への対応が重要になってきており、水道においても率先的・積極的な取り組みが求められています。
業務実施のメリットや効果
① 環境保全と経済性の両立(Win-Winアプローチ)を目指した効果的な施策立案を支援いたします。
② 効率性と環境・省エネルギー、持続可能性といった様々な視点からの分析・見直しを行います。
③ 電気エネルギーの使用や石油代替エネルギー等の積極的な利用により、環境負荷の低減を目指します。
本業務では、
①健全な水の確保
②施設機器の省エネ化、太陽光・風・水エネルギーによる自家発電
③3R(リデュース、リユース、リサイクル)
の実行などを対象とした業務です。
【環境・エネルギー対策の強化に係る施設課題及び主要施策】
水道事業における環境保全対策例
公害防止 | ・水質汚濁防止、化学物質の適正管理、その他公害防止など関連法令を遵守 |
省エネルギー (地球環境保全) |
・省エネルギー、石油代替エネルギーの利用促進 ・環境効率性・経済効率性の良いシステムへの変革 ・施設更新等にあわせ、エネルギー消費の少ない施設やシステムを整備 ・水の有する位置エネルギー、熱エネルギー等の利用 ・他分野との協調・調整を図り、社会システム全体で環境負荷を低減 |
資源循環 |
・浄水発生土や水道工事等で発生する土やコンクリート塊等の再利用 ・効率的な資源利用、廃棄物減量化リサイクル等の推進 |
健全な水循環 |
・漏水防止等による有効率の向上、老朽施設の計画的な更新等 ・用途間転用、取水・排水位置の適正化 ・上流取水による水道システムの再構築 ・地下水利用から水道水利用への転換などを必要に応じて進める |
環境管理 | ・環境評価活動プログラムなど活用し、自主的かつ積極的な環境保全への取組み |
社会活動 |
・自然保護、緑化等の環境改善対策 ・地域住民の環境活動に対する支援等 ・環境情報の公表・環境公告などを通じ関係各機関や民間企業、流域住民との連携 |
2.エネルギー管理計画の策定業務
概要
近年、水道事業にとって、地球温暖化対策、廃棄物の減量化や資源の有効利用等の環境問題への対応が重要になってきています。
水道事業は、浄水、配水設備の運転などに全国の電力の約0.9%を消費しているエネルギー消費生産の側面を有しており、環境保全対策への主体的かつ積極的な貢献が求められています。
業務実施のメリットや効果
① エネルギーの消費抑制
② エネルギーの有効活用
③ 新エネルギーの活用
④ 管理標準の作成とエネルギー管理組織の構築
【作業フロー】
3.省エネ・創エネ対策の検討業務
概要
水道施設の電力消費量は日本全体の約1%となっています。平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震発生に起因する福島第一原発の事故を受け、全国の原子力発電所が稼働停止するなど、全国で今まで以上に節電が求められています。水道事業体においても、使用エネルギーの削減などによる省エネルギーおよび創エネルギーの利用を促進する施策を積極的に実施してゆく必要が有ります。
OECでは、浄水・送水等の過程で生じる余剰エネルギーの活用、水道施設や敷地を活用した自然エネルギーの活用などの利用可能性を調査し、省エネルギーの推進と創エネルギーの導入を提案します。
業務実施のメリットや効果
① 電力費の削減(経済性)
② CO2の削減(環境保全)
③ 環境負荷の削減(環境保全)
本業務では、「水道ビジョン」や「改正省エネ法」を踏まえ、①新エネルギー活用、②浄水過程における取組み、③送水過程における取組み、④給・配水過程における取組みにおいて、省エネ設備の導入や運転上の省エネ対策等、対象となる施設に適した省エネルギー対策を検討します。
また、自然エネルギー・リサイクルエネルギーなどの「新エネ法」で定義されている石油代替エネルギーに関する具体的なシステム導入プランを提案します。
【エネルギー対策に係わる主な法体系】
省エネルギー対策の分類
項目 | 内容 |
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ポンプの回転速度制御 | セルビウス制御、インバータ制御及び液体抵抗制御等による回転速度制御の採用 |
ポンプ容量の適正化 | インペラ改造、ポンプ更新時の容量見直しの実施 |
可動羽根ポンプ | ポンプの流量制御に羽根角度制御を採用 |
高効率機器 | 特高、高圧、低圧の高効率変圧器や高効率電動機等の導入等の導入 |
電力貯蔵 | NaS電池、レドックスフロー電池の導入 |
効率的なエネルギーの管理 | デマンド管理、力率管理、電力監視システムの導入や契約電力の見直し等 |
効率的な水運用 | 配水池容量の活用、送・配水水圧の適正管理による効率的なポンプ運転制御および管路にブースターポンプ設置などの実施 |
効率的な水処理制御・方式 | 攪拌装置・スラッジ掻寄機、ろ過池洗浄方式、薬品注入制御、排水処理設備運転制御及び高度浄水処理設備運転制御の効率化等 |
建築付帯設備 | 換気、空調、照明等の省エネの取込みやESCO事業等での省エネ対策の実施 |
新エネルギーの分類
項目 | 内容 |
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省水力発電 | 導水圧、送水圧、配水圧等のエネルギー活用による水力発電(発電電力10,000kw未満で、ミニ水力及びマイクロ水力発電を含む。) |
太陽光発電 | 建物屋上、配水池上や配水池、沈殿池、ろ過池の遮光や覆蓋上部への太陽電池の設置 |
風力発電 | 標高の高い水源地や風力が強く有効利用可能な場所に設置 |
太陽光発電と風力発電のハイブリッド | 太陽光発電と風力発電を組み合せ、屋上や街路灯等に設置 |
コージュネレーションシステム | 発電機の電気を作る時に発生する熱も同時に利用(常用発電設備) |
燃料電池 | 都市ガス、LPガス、メタノール等から水素を取出し、酸素と化学反応させ発電 |
その他 | バイオマス発電、太陽熱利用等の導入 |
【省エネルギー項目別の対策実施事業体数】
【施設別における省エネルギー対策実施施設数】
【新エネルギー項目別の導入実施事業体数】
【施設別の新エネルギー導入施設数】
4.浄水汚泥の有効利用の検討業務
概要
浄水処理の過程で発生する浄水汚泥は、我が国の産業廃棄物排出量の約2%を占めています。H16年策定の「水道ビジョン」では、浄水汚泥の有効利用率100%を目標に掲げており、廃棄物の減量につながる利用が期待されています。
近年では、農園芸用土、セメント原料等に再資源化され、利用率は63%に上昇しています(H20年度時点)。また、汚泥の特性を活かした排水処理用のリン吸着剤としても期待される一方で、低コスト処理が課題です。
業務実施のメリットや効果
① 浄水汚泥の再資源化による埋め立て処分量の削減
② 農園芸用土、グラウンド用土、セメント原料等への再資源化による環境負荷の低減
③ 需要と供給のバランスのとれた浄水汚泥の利用用途の拡大
浄水汚泥については、再資源化やリン吸着剤としての有効利用が期待される中で、その処理をいかに低コストに抑えるかが課題となっています。また、再資源化した製品の販路等を含め、需要と供給のバランスのとれた循環サイクルの構築が重要となります。そのため、各施設の処理方法、汚泥の性状、市場での需要の有無等、現状を把握したうえで有効な利用方法を選定する必要があります。これらを踏まえ、弊社では浄水汚泥の有効利用の促進、利用目的の拡大とともに低コスト処理に重点を置いた提案を行います。